断熱性能
 ■輻射熱


人体の感じる暑さ寒さの感覚を温感と呼び、この感覚は皮膚表面における熱収支により支配されます。この熱収支は皮膚及び衣服の表面への外的な熱作用によるものであり、まわりの空気との対流熱交換と床、壁及び天井等の室内側表面との放射(輻射)熱交換により行われます。例えば、冬期において風の強い屋外で寒く感じるのは、外気温度が低いためですが、風が強くなるとさらに対流熱伝達率が大きくなり、人体からより多くの熱が奪われます。これに対して室内の床暖房は、室温より床表面温度をやや高くすると(例えば室温20℃、床暖房表面温度31℃)、比較的低い空気温度においても輻射熱により人体へ熱供給され、より暖かく感じます。
室内においては、通常屋外のような風速が存在しないため、人体及び衣服表面での熱交換量は、対流と輻射の約半分ずつよって担われていると考えられます。従って、同じ空気温度であっても床、壁及び天井等の室内側表面温度が高い場合には、より暖かく感じます。一方、室内側表面温度が低い場合は、空気温度が高い場合でも寒く感じます。
軽量鉄骨造の繊維強化セメント板(波板)葺き屋根の室内側に、厚さ25mmの木毛セメント板を天井下地材として、垂木である軽量鉄骨材に直接施工した場合の室内の室内侵入熱量と室内側表面温度は、表面温度においては約5℃の温度差を示します。屋根(天井)面の表面温度の違いが人体の温感に対して、どの程度の違いとなって現れるかは壁や床などの部位の表面温度や、室内形状との形態的関係を明らかにする必要があります。しかし、床暖房の例を考えれば同じ室内温度においても、部位表面が高ければ暖かく感じ、低ければ涼しく感じるのは明らかです。
さらに、屋根からの室内侵入熱量は木毛セメント板により約1/3となります。これは屋根単位面積1m2における数値であり、規模が大きな建物ほど侵入熱量差が増加します。また、この数値は室内冷房などの機械設備を用いず、通風による室内熱侵入量であり、冷房を行う際には、室内熱量を冷房装置にて外部に排出しなければなりません。設置した冷房装置の能力が室内に侵入する熱量より小さい場合、設定温度に達することができず、無駄に電力を消費してしまう結果になります。快適な室内温度に早く達し、消費電力を抑えるためにも、有効な断熱処理を施す必要があると考えられます。

室内侵入熱量と室内側表面温度の比較
  繊維強化セメント板(波板) 繊維強化セメント板(波板)+
木毛セメント板(25mm)
室内側表面温度(℃) 36.1 30.8
室内進入熱量 
(J/mh)
(Kcal/mh)
355×10
73
103×10
24.5